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仕事や研究、コンピューターとの付き合い方

専門分野以外へのかかわり方

池田信夫さんとか小飼弾さんとか池上彰さんとか世の中には自分の専門分野を離れたところにも一家言持つ人がいる。彼らはリサーチ能力とか理解力とか分析力が高いので、その分野について未知な読者は「知らなかった!」「面白い」「ためになる」という印象を持ってますます彼らのファンになる。また、特に前者二人については、既存の通説を無視して斜め上からの議論を放つので「斬新!」という反応を得ることになる。本は売れるし読者は楽しいし全くもって素晴らしい。
さて、問題はその分野についてよく知っている人、あるいは専門家である。基本、苦々しい思いで見ている。つまり、彼らの議論は専門家からすれば素人考えの枠を超えない、その分野での長年の議論の蓄積を無視し、かつ細かな、あるいは重要なファクトを無視した議論であり、かつ普段自分たちを相手にしていないような一般の読者に誤った、もしくはその分野で認めてられていない知識を植え付ける有害なものとして受け止められる。
もちろん、文学とか芸術とか宇宙理論とか民族学とかそういうのは別に誤解されても世の中的に実害は少ないのでそれほど大きな問題ではない。もし誤った知識や解釈の流布がまずいならプロがちゃんとした本を新書で書けばいい。
問題は経済問題とか社会問題とか医療とか原子力とかそういう生活に直結する話に首を突っ込まれると実害が出てくる。彼ら専門外の人気者の議論を信じる一般の人がそれらの諸問題における重要な意思決定に政治や世論などを通じて影響を与えてしまうのだ。かといっていちいち彼らの本をチェックして誤りを指摘するのも膨大なコストがかかる。
少なくとも世の中に影響を持つ人気ジャーナリストやブロガーたちは、よく知らない分野について発言する際には少なくとも1−3ヶ月くらいはきちんと取材や勉強をして、「素人の奇想」レベルを脱して欲しいし、さらには書いたものをその道の専門家に一度は見せて誤りを直してから世に問うてほしいものだ。
ブログはともかく出版社というチェック機構を通してもそうした変なものが世に出てしまうのが悲しい。