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因果関係についての徒然

最近思うこと。 因果と相関はちがうというが、厳密に考えるとなかなか難しい問題だと思う。 実験室実験における「介入」と「効果」の関係は因果関係と考えてよいが、現実経済における変数間の関係性は因果なのかただの相関なのかよくわからない。 ただ、いえることは「因果」の背景には、何らかコントロールできる変数の存在と、何らかの主張が存在するということだ。 例えば、「遺伝子○がx型である人は犯罪をおかしやすい」という言説には正直言ってあまり価値がない。この関係性が因果関係だとしても政策的にコントロールできるものが存在しない。 逆に、「道徳教育を受けると犯罪をおかさなくなる」という言説は強烈な政策提言になる。そして、その政策提言に対しては、「道徳教育ができるほど裕福な学校区ではそもそも犯罪が少ない」といった反駁がくる。 しかし、観察事象としては、道徳教育と犯罪発生数には関係性があるのであって経済レベルのような第3の変数を思いつけるかどうかというのはかなり恣意的である。ここが因果推論やそれに伴う政策提言が、単なる機械学習とは違う「アート」な部分だ。経済学では経済レベルや学歴を「本当の要因」として重視しがちだが、これもある種恣意的で、じゃあ、それはどこから発生したのかという議論になる。究極的には遺伝子や生まれた地域など、たまたまというところに帰結できる可能性もある。そうなると言説としては価値がなくなる。 もちろん、人間がコントロールできるレベルには問題の要因がないというある種諦念みたいなものを流布する効果はあるかもしれないが、それはコストをかけて作り上げるべきものではないだろう。 逆に、コントロールできるレベルに問題の要因があるとする言説は、多少精度が(バイアスなどの意味で)悪くても世の中を前進させるためには意味はある。