Take Your Time

仕事や研究、コンピューターとの付き合い方

1.雇用者の階層化

「週間東洋経済」誌の特集「日本版ワーキングプアが示すように、日本でも貧困層の問題が当たり前のように取り上げられるようになってきました。
少し前まで(否、現在でも)日本の産業界の課題は「高コスト是正」でした。(例えば、平成8年経済白書)
そして、平成不況や、構造改革、国際競争を背景に企業が高コストの正規雇用者を減らした末に
非正規雇用者と長時間労働正規雇用者という二重構造を生み出しました。
ここまではよく聞かれる議論です。

2.効率化を支持する層

効率化(ここでは非正規雇用者を増やすことによる人件費カット。もしくは正規雇用者の非正規雇用化)に対する人々の反応は階層によって分かれると思われます。
比較的高賃金で安定を確保している正規雇用者にとって見ればこれ以上の効率化は、
自らも不安定な非正規雇用に転落してしまう可能性を秘めており避けたいでしょう。
景気回復と小泉政権の終わりは彼らには朗報です。

一方、既に不安定な立場にある非正規雇用者は、正規雇用者との格差に憤慨しており、専ら非正規・正規の差の解消を希望しているでしょう。

彼らの一部は正規雇用という枠組みをなくすことを希望するかもしれません。
事実、「正社員は自分たちアルバイトと同じ仕事内容なのに給与や社会保険の面で報わせすぎている」という声はよく聞かれます。
正規雇用を支える新卒一括採用や強い解雇規制は撤廃すべきとの主張もあり得ますし、正規雇用者にだけ提供されている社会保険(法制上はともかく実態上は非正規雇用者には社会保険加入をさせない事業主は多い)や厚生年金、退職金制度はなくすべきだという主張も合理的です。

一方、リタイアし、消費のみを行っている高齢者にとってみれば、一層の効率化は歓迎されます。
人件費カットが進めば消費財の価格は下がりますし、労働分配率の低下は必然的に資本分配率の上昇をもたらし彼らの資産を増加させます。

こう考えると、制度が効率化の方向へ回りだすと、効率化のために犠牲となった人は
効率化の促進を指示する可能性もあり、また増加する高齢者層も一層の効率化を求めるということが考えられます。

3.階層化と効率化
こうした流れの先に見えるのが国内に餓死者がいる世界一の経済大国の姿です。
そういえばわが国でも餓死者が出ることも珍しくなくなってきましたね。
現在は漠然としている効率化反対の主張は、給食費を払えない家庭の増加や結婚できない若者の増加などを例示しただけの感情的な議論です。
一層の効率化を求める声が、非正規雇用者層や高齢者層から出てくれば多分敵わないでしょう。